病院の長い夜

肺炎で入院して初日は,その前の日の吐き気と咳による寝不足の反動で,ぐっすり眠っていられたが,数日経つと昼間もベッドの中にいるため,夜なかなか眠れない。

夜10時に抗生剤の点滴があり,その後眠りにつく。気が遠くなり,尿意で眠りから覚めトイレに行った帰り,ナースステーションの時計を見るとまだ12時である。ぐっすり眠った感覚があるのに2時間しか経っていない。再び眠りに入る。再び尿意を感じトイレに行くが,時刻はまだ夜中の2時である。

それからなかなか寝つかれない。

東畑開人氏の「居るのはつらいよ」を読んだせいか,ふと統合失調症の発症メカニズムについての空想が頭をよぎる。統合失調症は多くの場合青年期に発症し,その傷は生涯残る。

シロクマ(意識)とクジラ(無意識)のたとえでいうと,シロクマとクジラがともに赤ん坊のころは,海岸で仲良く遊んでいた。そのうちだんだん成長していってシロクマは陸上をウロウロするようになり,クジラは深い海まで潜るようになった。そうこうしているうちに気温は低下していき,海には氷が張りだした。シロクマはもう,クジラのことを忘れてしまった。

多くの場合,氷はだんだん厚くなり,再びシロクマとクジラが会うことはない。しかし何らかの気象変化が起こって,氷の一部が溶け出すことがある。そうすると成長した巨大なクジラが水面に現れ,シロクマはパニックになる。シロクマはクジラが何者か分からず,右往左往する。

シロクマとクジラの争いはその後もずっと続く。シロクマには自分の力で,海面を凍らせることはできないのだ。

(2019年12月26日 木曜日 曇り時々雨)