ある友人のこと

肺炎で入院して2日目である。息の苦しさは少し和らいだ。

仙台にいたころ,研究室の後輩の一人と親しくなった。その友人は学部4年で卒業し,電機メーカーに勤めていた。そして一年ほどたって大学に戻って来た。民間企業がどうも合わなかったみたいだ。

大学で教職免許を取るのだといっていたが,私の下宿に来ていろいろ雑談していても,かつての彼とようすが違い,やけに陽気になっていた。

その後音沙汰がなくなり,しばらくの間音信不通になっていた。私が彼に連絡をとったのか,彼から連絡があったのか今では分からなくなっているが,私の帰省の折に彼の故郷に寄ることになった。

彼の母親の話では民間企業に勤めているときに統合失調症を発症したらしく,今は自宅近くの病院で治療を受けているということだった。

私が教職についているときも何度か研究室の電話で彼と長話をした。

東畑開人氏の「居るのはつらいよ」(医学書院)を読んでいて,彼のことが思い出された。

本の中に出てくるシロクマ(意識)とクジラ(無意識)の話がわかりやすく,彼もクジラが大暴れしたときは,必死でクジラをなだめていたのだろうと想像した。

彼とは長い間連絡を取っていないが,今どうしているのかと思い,なつかしみの気持ちが満ちてくる。

(2019年12月24日 火曜日 快晴)