久住山

私は山登りを趣味のひとつにしてきた。それで昨日から最初に山に登った経験を思い出そうとしていた。私は北九州市にある工業系の大学に通(かよ)っていたのであるが,クラブ活動は柔道をしていた。大学3年の夏で柔道には一区切りをつけ,柔道から離れた。

最初に登った山はどこだったのかと考えた。なんとなく英彦山だとずっと思っていた。英彦山は北九州市からそんなに離れてもいず,登るのが容易な山だからである。ところがアルバムを開けてみると,英彦山には大学4年の冬に登った写真がある。一面雪模様の写真である。それで,英彦山が最初に登った山ではないことが判明した。

じゃあ最初に登った山はどこだろうと思いを巡らし,久住山と結論づけた。別府からやまなみハイウェーをバスで久住山のふもとまで行って,そこから登った記憶がある。地図で確認すると牧ノ戸峠から九重連山に入る登山ルートがある。一人で行き,そのバス停に降りたのも私一人であった記憶がある。久住山(1786.5m)に登ったのか中岳(1791m)に登ったのかの記憶はあいまいであるが,中岳直下の避難小屋に泊まったのは憶えている。その当時も九州の山々の頂上付近には避難小屋が整備されていて,登山しやすい環境があった。どの避難小屋も無人の小屋なので,シュラフや食料は持参しないといけないが,本州の山小屋のようにギュウギュウで寝ざるを得ないことはなく,快適であった。

山小屋で一夜を過ごし,朝起きて外を見渡したとき,一面の霜に覆われていたことを思い出す。登ったのは大学3年の晩秋であったのであろう。山小屋から長い下りを竹田市の方に向かって下っていった。

登山に関して,もうひとつ記憶違いをしていることがあった。山に関する本をいろいろ読んだのだが,なかでも一番おもしろかったのは高田直樹さんの「なんで山登るねん」(山と溪谷社)である。痛快な山登りエッセイで3巻本を楽しく読んだ。それで私はこの本を読んだから自分が山登りに興味を持ったと思い込んでいたのだが,今調べてみると,この本が出版された年は私が26才くらいな年である。だから私が山登りを始める前にこの本を読んだのではないことがわかった。

遠い昔はなつかしいが,あいまいな記憶も多い。

(2019年8月6日 火曜日 雨)