賭 け
(前段 略す)
ああ
そのとき
この世がしんとしずかになったのだった
その白いビルディングの二階で
僕は見たのである
馬鹿さ加減が
丁度僕と同じ位で
貧乏でお天気やで
強情で
胸のボタンにはヤコブセンのバラ
ふたつの眼には不信心な悲しみ
ブドウの種を吐き出すように
毒舌を吐き散らす
唇の両側に深いえくぼ
僕は見たのである
ひとりの少女を
(後段 略す)
黒田三郎詩集 (現代詩文庫) 「ひとりの女に」より
私には詩を鑑賞するほどの力はないが,茨木のり子著「詩のこころを読む」(岩波ジュニア新書)の中に載っている黒田三郎の詩を読んで,生まれて初めて詩集を購入した。特に
ふたつの眼には不信心な悲しみ
のフレーズが気に入った。私が妻と出会ったのは,通学バスの中である。そのときのおかっぱのかわいいい少女と上記の詩の中の少女が私の頭の中でオーバーラップした思いがある。
遠い昔の話であるが,なつかしい思い出である。
(2019年8月5日 月曜日 晴れ)