最後の食事

入院してからたまっていた胃の内容物をチューブで外に出してもらい,吐き気はおさまった。食事は栄養缶のみになった。胃ろうで入れる栄養缶と同じものである。バニラ味が付いていて,飲みにくい。

それが4日ほど続き,再び夜中に吐き気がし,一晩中,ベッドの上で嘔吐した。吐き出した内容物は余り多くなく,胃の中にまだだいぶたまっているようであった。朝,看護師さんに再びチューブで胃の内容物を出してもらい,吐き気はおさまった。

その後2,3日,再び栄養缶を飲んでいたが,手術の準備のため今度は栄養をすべて点滴で摂ることになった。

そのとき感じたのは,ひょっとして最後の食事の時期をもう既に逸(いっ)したのではないかということであった。

特に何が食べたいというのではないが,普通の食事がもうできなくなっているかもしれないという思いが強くなり,後悔した気分になった。

食事が生きるたのしみのすべてではないが,大きな部分を占めていたなあとつくづく思うのである。

妻が,手術がうまくいったらまた食べられるから,食べたいものを考えておいてと言ってくれる。それを励みにしよう。

(2020年1月26日 土曜日 曇り)