志々島

志々島(ししじま)は詫間町沖にある小さな島である。かつて,妻がよくかよっており,島の数少ない住民との楽しいやりとりをよく話してくれた。私は詫間町で勤めていたにもかかわらず,志々島に行ったことがなかった。2年前,妻が誘ってくれて,その島を訪れた。下記文章はそのときの様子である。

本日は妻の誘いを受けて,妻同伴の志々島巡りである。朝8時,詫間町宮ノ下船乗り場に着く。コンビニエンスストア―で用を済ませ,粟島汽船の渡航船に乗る。釣り人や老婦人がともに乗船する。小型であるが,きれいな船である。妻が前に乗ったときにはもう少し古びた船であったという。詫間町を海側から見るのは久しぶりである。陸から見る景色と異なっていて,おもしろい。こんなに工場があったのかと驚く。

9時すこし前に志々島に到着する。いい天気である。大楠への矢印案内板に沿って進むと志々島の様子を写した写真がきれいに展示されている。それらを眺めながら前へ進む。志々島の様子を絵にし,はがき大の大きさにしたものが展示している。絵に風味があって,心温まる。

家々のあいだの狭い通路を進むと杖が置いている。妻がぜひ借りていこうというので,私も1本借りることにした。軒先に杖の置いている家は島唯一の商店,上田商店であることを帰宅してから知ったが,そのときは締まっているように見えて,まさか商店とは思わなかった。

先に進むと急な階段が続く。途中,人が住んでいないらしい家が多く目につく。お寺らしきものもあり,それはたぶん利益院であろうと後で想像するのだが,荒れ果てている。

竹がうっそうと茂る間を抜けると太平洋戦争の戦没者の墓がかたまって並んでいる。小さな島なのに多くの犠牲者が出ている。道の端に墓地がいくつか立っている。どれも墓石の表面が風化し,判別できない。

さらに進むと道の両側がきれいに草刈りされている。志々島の自然を守る人々に頭が下がる思いである。セメント道を進むと分岐して右に下る道がある。大楠への矢印案内板があり,それにしたがって下る。湿気があり,すべることに注意しながら進む。やぶ蚊が多く,それをさけるため,ウィンドブレーカーのフードを頭から被り,耳元,首筋の蚊対策とする。名前の分からぬ草木が道端に植えられている。今は晩秋だから,草木も青々さを失っているが,花が咲き誇れる季節では,さぞ見ものであろうと想像する。

大楠はどっかりと枝を広げ,やさしく待ち受けてくれた。鳥居があり,小さな祠が祭っている。

大楠を後に,土の歩道を進むと,展望台に出る。楠の倉展望台である。近くに高見島,その向こうに広島,本島が見える。また,瀬戸大橋,丸亀の造船所のクレーンが見える。ここから見る飯野山は形がよい。

展望台からセメント道を戻り,大楠への分岐点まで来ると,2人のご婦人に出会う。いまから大楠を見に行くのだという。蚊にご注意くださいといって別れる。

道を先に進むと志々島の頂上への道がある。妻が前に来たときは草ぼうぼうでとてもじゃないがいけなかったそうである。今は草がきれいに刈られている。妻と頂上を目指すことにする。途中,木のない広場に出,妻がその場を頂上と見間違う。さらに進むと道は相変わらずきれいに草刈りされており,快適である。蚊も少なくなる。横尾中継水槽と看板のあるコンクリート構造物に出会う。これはどのような働きをするものか,妻と語り合う。

中継水槽を少し進むと頂上(横尾の辻)に辿り着く。360度展望の利く素晴らしい場所である。楠の倉展望台から見えた眺望のほか,荘内半島や粟島,佐柳島の展望も手にすることができる。草木はきれいに刈られていて,気持ちいい。

頂上から中継水槽を経て,横尾方面に下る。途中,同様の中継所があり,これは水道の水をボンプアップしているのではないかと妻に話す。横尾集落は無人ですべての家屋が朽ち果てている。

海岸に降り,海岸沿いに船着き場方面に向かう。家,船,釣り道具が放置されている。途中,八幡宮がある。大きな社であるが,手入れしている様子がない。そこを通り過ぎるとヤギの姿が見える。妻より,あれは我が家に卵を届けてくれる山下さんがかつて飼育していたものだと教えてくれる。ヤギの世話をしている老人としばし雑談する。

その先に十握(とつか)神社がある。安産の神様である由。急な階段があり,階段には雑草が茂っているが,娘の安産と孫の安全を願い,妻とお祈りする。

11時に船着き場に着く。2人のご婦人と再会し,しばし談義する。一人は丸亀の人,もう一人は名古屋の人らしい。

帰宅するときは少し曇って,黒い雲も見えだした。

宮ノ下→志々島港→上田商店→利益院→大楠への入り口→大楠→楠の倉展望台→横尾への入り口→広場→横尾中継水槽→横尾の辻(志々島の頂上)→横尾中継水槽→横尾集落跡→海岸→八幡宮→山頭神社→十握神社→船乗り場→宮ノ下

(2016年11月20日 日曜日 晴れのち曇り,2019年1月20日地図作成)